1回だけ盛り上がりに欠けた「花見」があった。
明治通り沿いの「daDA」という喫茶店はたまり場であったが、突然「今年はまだ花見をやっていない!」という事実に、そこにいた4名で急遽「戸山公園お花見ツアー」を開催した。
並びの八百屋からダンボールを調達し、一升瓶500円という極悪ワインを持って一行は戸山公園へ夜桜見物へ。
口の周りに髭をたくわえ、髪の毛はボサボサ気味のK出氏がダンボールを持って歩く姿は、まさに本物の住所不定者だった。
で、公園へ到着するも・・・・・「桜」がない・・・・。厳密に言えば、もう桜は散ってしまっていた。
ここまで来たら後へは引けぬ。花見強行!
むさくるしい汚い男達が、ダンボールを敷いて一升瓶のワインを飲んでいる姿は、花見とは程遠いものが。
すると・・・・突然現れた会社帰りの人たち多数。我々を見て見ぬふりをしながら冷たい目線を落とし横を通り過ぎていく。
こ、ここは、戸山ハイツへの裏道であった!
「まずい!こんな格好で這いつくばって酒を飲んでいる姿は、ま、まさに本物と間違えられてしまう!」
機転を利かせたA妻氏が、わざと大きな声で
「い、いやぁ、まさか桜が散ってしまっているなんて思わなかったよなぁ!なぁ、なぁ、なぁ、K安田くん!」
「は、は、はい、そうですね、そうですね、そうですね、そうですね」
我々は仕事帰りと思われる通行人が通るたびに、このような会話、というか言い訳を、ちゃんと聞こえるように大きな声で言い続けなければならず疲れてきてしまった。
しかも安物のワイン。
「こんな薄いワインじゃ、酔いもまわらん!」
と、我々も帰宅の徒に着くため立ち上がると・・・・・お、おや?ふらふらふら・・・・。
これが、安酒の悪酔いと知るのはこの後のこと。
なんだか突然に酔いがまわってきて、更にブランコなんざこいでしまったもんだから、インスタント酔っ払いの出来上がりである。
ヨロヨロと歩く4名。
坂道の横の一段高いところに寝そべったK出氏は、約1mほどの高さからドタッと転落。一瞬動かなくなったが、むっくり起き上がり命に別状はなく一安心。
「葉桜の、下で虚しい、ブルースマンたち」
またも字余り・・・。